
【ワシントン=冨山優介】「我々の機体は間違いなく月面にある」。22日午後(日本時間23日午前)、米宇宙企業インテュイティブ・マシンズの無人月着陸船「ノバC」の着陸成功を同社の幹部が宣言すると、管制室内に拍手が鳴り響いた。
今月15日に打ち上げられたノバCは、月の南極から約300キロ・メートル離れたクレーター「マラパートA」周辺に降り立った。民間企業が月面着陸を成し遂げたのは史上初で、南極域への着陸はインドに続く2例目だ。
米航空宇宙局(NASA)のビル・ネルソン長官は「世界で初めて民間企業が月への航海を主導した」と快挙を祝った。NASAは月への商業輸送を担う企業を育成するため、同社など計14社を支援してきた。
月の極域には水資源が眠るとされる。水は宇宙船の燃料の原料や、有人月面基地での活動にも使える。同社などは、月への物資輸送や月資源を採取する宇宙ビジネスの実現を狙う。
日本が加わる米国主導の有人月探査「アルテミス計画」でも2026年、南極域に米宇宙飛行士を送る予定だ。ノバCの着陸地点は有人着陸する候補地の一つに近い。約7日の運用期間中、カメラなど月の環境を評価できる機器で一帯を観測し、計画を後押しする。
月を巡っては、宇宙航空研究開発機構( JAXA )の探査機「 SLIM 」が今年1月、着陸に成功した。日本の宇宙新興企業も、アイスペース(東京)が昨年4月の失敗の雪辱を期し、早くて今年10~12月に着陸船を打ち上げる。ダイモン(東京)は、超小型探査ロボット「 YAOKI 」を開発。インテュイティブ・マシンズが年内に打ち上げる着陸船に載せ、月を目指す。
ダイモンの中島紳一郎・最高経営責任者(CEO)は「自分のことのようにうれしい。次の着陸には、我々のYAOKIがミッションに彩りを添えたい」と述べた。