西崎信夫さん(平和祈念展示資料館提供)
太平洋戦争当時の少年兵で、戦後は平和祈念展示資料館(東京都新宿区西新宿2)の語り部となり、2021年11月に94歳で亡くなった故西崎信夫さんの軌跡をたどる企画展「15歳少年兵の記憶~僕は、駆逐艦『雪風』から散っていく命を見た。」が、同館で開かれている。10月14日まで。入館無料。(中村真暁)
遺族が寄せた海兵団時代の日記や、関連する写真など約60点を集めた。西崎さんの著書から「夢と希望に満ちた多感な少年たちを二度と戦場に送ることがないように」といった言葉を紹介する。
西崎さんは1942(昭和17)年、15歳で中堅幹部育成制度の海軍特別年少兵に志願し、翌年12月から戦後を含む3年8カ月間、駆逐艦「雪風」に乗り組んだ。多数の海戦に加わり、戦艦「大和」「武蔵」や空母「信濃」などの沈没に遭遇した。
雪風は、太平洋戦争開戦から終戦まで第一線にありながらほぼ無傷で「奇跡の駆逐艦」と呼ばれる。復員・引き揚げ輸送にも従事し、西崎さんは旧満州や南方から、半死半生で帰還する人々を目の当たりにした。鎮魂の思いで語り部となり、亡くなる直前まで戦争体験を伝えた。
海兵団時代の西崎信夫さんの日記=新宿区で
西崎さんと共著書がある小川万海子(まみこ)さん(57)は会場を訪れ「本を作り上げたときの気持ちや西崎さんのエネルギーがよみがえるよう」。西崎さんの娘麻子さん(65)=西東京市=は「世界では今も戦争が起き、生きて帰れない人がいる。戦争を考えるきっかけになれば」と願う。
企画展は資料館の愛称が7月に「帰還者たちの記憶ミュージアム」となったことに合わせて開催。8月10日午後2時から小川さんのトークイベントがあり、麻子さんも登壇する。9月3日に一部展示を入れ替える。休館日など詳細は資料館ホームページで。