<東京むかし、いま、みらい都知事選2024>
東京都知事の立場は「大統領」に例えられる。行政のトップとして人事権や予算編成権を持つ仕組みは他の知事と変わらないが、首相や閣僚と同じように、日常的に警視庁の警護(SP)がつく。1400万人という東京の人口や経済、巨大な予算に裏打ちされた発言力や影響力は絶大。都政にとどまらず、時に国の政策の流れをつくることもある。
東京都庁。あるじの都知事は大統領に例えられる
これまでの都知事で象徴的なのは、石原慎太郎氏が「東京から国を変える」と主張し、1999年の就任直後から取り組んだディーゼル車の排ガス規制だ。石原氏は大気汚染が社会問題となる中、都独自の条例で基準を満たさない車の都内での走行を禁止。規制の動きは首都圏に広がり、国の法改正にもつながった。大手金融機関を対象とした銀行税は頓挫したが、税制のあり方に一石を投じた。
69年に美濃部亮吉氏が打ち出した70歳以上の医療費無料化も、都が国を動かした一例。国は当初慎重な姿勢だったが、美濃部都政への都民の高い支持を目の当たりにし、73年から無料化に踏み切った。
2020年以降のコロナ禍では、現職の小池百合子氏が財政力を背景に、独自の協力金を事業者に支給して休業を促すなど、感染抑止対策を展開した。
都の元副知事の一人は「都知事が『やる』と言えば、だいたいのことはできてしまう。特に世論を味方につけた時にはその力は絶大で、これまで多くの都知事が『国と対峙(たいじ)する』という構図をうまく使いながら、その力を利用してきた」と指摘する。
ただ、力の強さ故に、常に「独裁」となるリスクも。元副知事は「大事なのはその力で、どんな東京をつくるのかということ。将来のビジョンを丁寧に、分かりやすく語り、共感を得る力も必要になる」と話す。(岡本太)
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