リニア中央新幹線(品川-名古屋)の地下トンネル建設のため国がJR東海に地下40メートル以深の「大深度地下」の使用を認めたのは平穏な生活を送る権利や財産権を保障した憲法に違反するとして、東京都大田区、世田谷区、町田市の住民45人が国に認可取り消しを求めた訴訟の第1回口頭弁論が30日、東京地裁(品田幸男裁判長)であり、国側は訴えを退けるよう求めた。
リニア中央新幹線の試験車=山梨県都留市の実験センターで
原告の意見陳述があり、トンネルルート上に住む保科由記子さん(77)=大田区=は、工事が進み仮に自宅地下の地盤が破壊されても転居したり建て替えたりする財力も体力もないとし「不安にさいなまれ、眠れぬ夜もある。人権侵害が公正に判断され、工事が止まり、一刻も早く平穏な生活に戻れるよう願っている」と裁判官に訴えた。
国側は答弁書で、トンネルルート上に住んでいない一部の原告は訴訟を起こす資格「原告適格」を有しないとして訴えを却下するよう求め、残りの原告に対する主張は後日行うとした。
国土交通相は2018年10月、JR東海に大深度地下の使用を認可。JR東海は21年10月に調査掘進を始めたが、機器の故障などでたびたび中断している。(加藤益丈)
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