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トラブルなく安心して「二次創作」を…著作権者がガイドラインを示すケースも 自由表現の行方はどうなる

Aug 8, 2024 教育 IDOPRESS

<101回目からのコミックマーケット>第5部素朴な疑問②著作権~後編~

「原作へのリスペクトは大前提」「原作者が不快に思うようなら、やめる」

昨年末の冬コミ(C103)で、二次創作を手がけるサークル参加者に取材したところ、こんな声が多く聞かれた。好きな作品への愛情が感じられるのは無論だが、著作権者とのトラブルは避けたいとの思いも透けて見える。

また、別の機会に、ある同人作家を取材した際、強く念を押されたことがある。

◆二次創作「できなくなる」ことが心配

二次創作を「どの作品でしているかは記事に出さないでほしい」と。

その真意は、「記事をきっかけに著作権者が『見て見ぬふり』ができなくなるかもしれない」ことにあった。その二次創作は、絵柄はデフォルメされ、暴力や性的な描写はなく、推しへの愛に満ちていた。見つかったからといって、すぐにトラブルになるような内容ではないかもしれない。だが、万一そうなった場合、「全ての人がその作品の二次創作ができなくなってしまう恐れがある」との危惧があったのだ。

前回のコミックマーケット(C103)が行われた東京ビッグサイト=2023年12月、江東区で

著作権への理解が進む中、二次創作を巡る同人側の意識も変わりつつある。

全国同人誌即売会連絡会世話人でコミティア実行委員会代表の吉田雄平さん(43)は「安心して二次創作をしたいという考え方が、若い世代を中心に芽生えてきた」と指摘する。背景には、インターネットの普及で、著作権者とトラブルになったり、ネット上で「炎上」したりした事例が広く周知されたことがあるとみられる。

こうした流れを受け、著作権者が許容できる範囲の目安となるガイドラインを示すケースも増えてきた。

◆枠にはめられる息苦しさも

同人サークル「上海アリス幻樂(げんがく)団」が展開するゲームを中心としたメディアミックス作品群「東方Project」や、同人サークルから出発したゲームブランド「TYPEーMOON」がアートディレクションするアプリゲーム「Fate/Grand Order」などがその例だ。

ガイドラインは作品ごとに異なるが、原作のイメージを損なう表現や、反社会的な内容、他者の権利侵害などを禁止事項として挙げているケースが多い。

「東方Project」の二次創作ガイドラインの抜粋(公式ホームページから)

そこまで厳しい内容はないように思われるが、公式ルールが明示される以上、表現が一定の規制を受けることにはなる。

「二次創作やパロディーは許可を得てやるものではないという従来の感覚からすると、枠にはめられる息苦しさもあると思う」と吉田さん。自由な表現が魅力の同人誌にとっては、悩ましいところだろう。

◆コミケ準備会でも注意喚起が…

コミックマーケット準備会はC103を前に発表したコミケットアピールで次のように注意喚起している。

既存作品を二次的に利用したグッズで、公式グッズと混同されかねないもの、数や頒布方法等でファン活動の範囲を超えているものは、「海賊版」とみなされ、権利者から訴えられる可能性が高くなる。場合によっては、刑事事件になる可能性すらある。また、登録商標である「トレードマーク」「ロゴ」の無断使用は明らかに許されない行為で、刑事罰が適用される。意匠権、商標権侵害は、親告罪ではない。著作権等の知的財産権に関しては一律な判断が難しいところもあり、準備会では判断できない場合が多いので、慎重に活動してほしい-と。

「Fate/Grand Order」の二次創作に関するガイドラインの抜粋(公式ホームページから)

グレーという微妙な色合いの上で成り立ってきた二次創作。絶妙なバランスだからこそ、クリエーターの卵が育まれてきた側面もある。コミケが今後もそうした「ゆりかごの場」であり続けられるかどうかは、参加者たちの意識にかかっている。(清水祐樹)


<101回目からのコミックマーケット>第5部素朴な疑問

さまざまな魅力にあふれたコミケの世界。ただ、初心者にはわかりづらい点、不思議に感じることがあるのも確かだろう。取材を通して、ふと感じた「素朴な疑問」を調べてみた。

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コミケはなぜ始まった?運営の秘密は?世界最大級のサブカルの祭典、その魅力に迫る


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