会場に並ぶ松本かつぢの作品
戦前から戦後に叙情画や絵本の挿絵、キャラクターなど幅広い作品で人気を集めた画家の松本かつぢ(1904~86年)の生誕120周年記念展覧会が、東京都世田谷区玉川4の松本かつぢ資料館で開かれている。「昭和の可愛(かわい)いもの文化の元祖」との副題で、原画や漫画本など約150点を展示。22日まで。(奥野斐)
38年から漫画の連載が始まった代表作「くるくるクルミちゃん」の初回や、挿絵が使われた戦地への慰問絵はがき、かるた、着せ替え人形など戦中戦後に発売されたグッズが並ぶ。クルミちゃんはリボンを着けた少女のキャラクターで、今の若者にも「かわいい」と人気は根強い。今年発売された哺乳瓶のイラストにも採用されたという。
「クルミちゃん」など松本かつぢの作品を紹介する宇津原充地栄さん=いずれも世田谷区で
かつぢの三女で、館長の宇津原充地栄(みちえ)さん(78)は「当時はクルミちゃんの絵が付いていれば何でも売れた、というぐらい人気だった。父はとにかく忙しそうに描いていた」と語る。
かつぢは、叙情画の世界で画家の中原淳一と人気を二分したといい、雑誌「少女の友」「少女」などで活躍し、漫画や絵本でも親しまれた。昭和30年代からはグッズの企画や制作も手がけ、イラストの入ったベビー食器はヒットした。
「とても器用な父だった。右手で線を描いて、左手で色を塗っていた」と宇津原さん。「懐かしいという世代から若者まで、ぜひ見てほしい」と来場を呼びかける。
通常の開館日は金、土曜だが、記念展覧会の期間は毎日開館。開館時間は正午~午後5時。入館料300円(中学生以下無料)。問い合わせは資料館=電03(3707)3503=へ。