都のカスハラ防止条例のガイドラインについて議論した有識者会議=新宿区で
顧客による理不尽な迷惑行為「カスタマーハラスメント」(カスハラ)を防ぐため、東京都が制定を目指す防止条例を巡り、都はカスハラに当たる行為の類型などをまとめた指針(ガイドライン)の素案を明らかにした。カスハラに該当する具体例として「土下座の強要」や「長時間にわたって執拗(しつよう)に自らの要求を繰り返す」などを示した。(三宅千智)
素案は26日、条例の実効性を高めるためのガイドライン策定に向けた有識者会議の初会合で、都が説明。「就業者へ威圧的な言動を取る」などの行為類型のほか、具体例も示した。カスハラの行為者には客や住民、議員、交流サイト(SNS)に書き込む人など、働く人が応対するすべての人を想定し、公務の現場でもカスハラが発生しうるとした。
顧客には「怒りの感情を抑え、落ち着いて内容を伝える」などを責務として課す。事業者には、カスハラを受けた人が相談する窓口の設置や被害防止のマニュアル作成などを努力義務とした。
会合で、都は今月8~16日に都職員約5万人に実施したカスハラ調査の結果も報告。回答した9385人のうち「過去3年間でカスハラを受けた」は50.1%。内容は「暴言」が最多で「同じ内容のクレームの繰り返し」「揚げ足取り、言いがかり」と続いた。「都職員としてカスハラをしたかもしれないと思う経験がある」も200人(2.1%)いた。
有識者会議は東京商工会議所や連合東京、東京消費者団体連絡センターなどの代表者、学識経験者で構成。この日、出席者からは、被害を防ぐために事業者が防犯カメラや録音機能を設けるための公的補助を求める意見が出た。
都のカスハラ防止条例は罰則のない理念型となる見通し。都は9月開会の都議会定例会に条例案を提出する方針で、成立すれば全国初となる。