〈ライバルとして見た「自民党」野党政治家インタビュー〉後編
自民党が歴史的大勝を果たした2月の衆院選は「非自民が比較的強い」とされてきた東京でも、自民が初めて都内30選挙区を制覇した。ただ、その後の清瀬市長選(3月)、練馬区長選(4月)では自民が支援した候補が敗れ、組織の弱体化も指摘される。
衆院選の圧勝劇は「高市旋風」による一過性の現象だったのか。今回、都内の選挙区で守ってきた議席を失った野党政治家3人に、地元で対峙(たいじ)する自民党の「実力」がどう映っているのかを尋ねた。
後編では、東京9区(練馬区西部)で落選した山岸一生氏、東京15区(江東区)で苦杯をなめた酒井菜摘氏の若手2人の話に耳を傾けたい。(鈴木太郎)=2人には別々の機会でインタビューし、再構成しました。
山岸一生(やまぎし・いっせい)1981年、東京都生まれ。東京大法学部卒。朝日新聞政治部で菅直人首相や谷垣禎一・自民党総裁などの「番記者」を務めた。2019年の参院選で東京選挙区(改選数6)に立憲民主党から立候補したが、7位で落選。2021年と2024年の衆院選では東京9区で当選したが、中道改革連合に参画して臨んだ2026年は自民党の菅原一秀氏に敗れ、比例復活もできず議席を失った。中道の若手落選者でつくる政治団体「Polaris(ポラリス)」の結成を主導した。
酒井菜摘(さかい・なつみ)1986年、福岡県生まれ。東京都内の病院に看護師・助産師として勤務する。江東区議(2期)を経て、2023年の江東区長選に立候補するが、次点で落選。2024年、江東区をエリアとする衆院東京15区補選に立憲民主党から立候補して当選し、同年の衆院選で再選。中道改革連合に参画して臨んだ2026年は自民党の大空幸星(こうき)氏に敗れ、比例復活もできず議席を失った。Polarisのメンバー。
──2月の衆院選を振り返って。
酒井チラシのはけ具合や激励の声はこれまで通りで、終始手応えは良かった。接戦だと思っていたら3万票ほど差がついていて、ぼうぜんとした。なぜ負けたか、ふたを開けるまでわからなかった。
山岸負けを確信したのは、投票日直前の金曜の夕方の駅頭。終盤に向けて盛り上げていくべき局面で、お付き合いの延長というか、熱のない握手が多かった。握手の数自体は多かったものの、金曜に帰路につくサラリーマン、日本経済を支える無党派のど真ん中から支持を得ないと勝てない中で、「これはだめなんだ」と思った。
──「高市旋風」を感じたか。

自民党が圧勝した2月の衆院選を振り返る酒井菜摘元衆院議員
酒井今回は高市早苗さんが女性初の首相として戦った。首相の激務を女性が頑張っているという印象が強かったのではないか。政権支持率7割は驚異的で、そこが大きかった。
対するわれわれは、抜き打ちの短期決戦の中、中道改革連合という新しい看板を十分に浸透させられなかった。せっかく衆院定数の過半数の候補者を擁立できていたのに、立憲民主党と公明党の出身者による共同代表制で、高市さんに対して「私が首相になる」という見せ方ができなかった。
山岸今回は明らかにゲームのルールが変わった。衆院の小選挙区は、従来は有権者とリアルで顔を合わせて票を積み上げるもの。地域の行事を回るなどしてコツコツ努力を続けてきたが、今回は一気に票が剥がれた。最近の選挙は、一人一人の努力ではあらがいきれない構図になっているのかもしれない。
例えば2009年総選挙では民主党がウエルカム、2012年総選挙では大逆風と、街頭の反応から民意を読みやすかった。今回はとにかく静かで、ほとんどの候補者が民意のうねりをつかめていたとは思えない。
今回、全国的に票を伸ばしたのは、「若手」「女性」「自民」の属性。一方で、どぶ板選挙の強い自民党議員でも、高齢男性はいまいち票を伸ばせていなかった印象がある。自民はトップを高市さんに刷新し、結果として民意をすくい取れたのではないかと思っている。
──とはいえ自民党は、裏金問題などで世論の批判を浴びた時でも一定の票は取り続けてきた。その力の源泉をどう見る。
酒井選挙にかけるお金と人の量が圧倒的に違うことが、一つあるのではないか。
地方議員の数でいうと、(私の地元の)江東区議会に自民党は10人以上いる一方で、立憲民主党所属は1人だけ。自民陣営は選挙期間中の週末、豊洲の駅前を朝から晩までジャックするなど、運動員の数の違いを見せつけられた。
地域行事でも、自民の議員は必ず呼ばれるが、他党の議員は呼ばれないこともある。自分から情報を取らなければならず、野党の自分には地域に入り込むハードルは高い。町内会など地域への食い込み方と、積み上げてきた歴史はあなどれない。
企業献金などにより、資金も潤沢だと感じる。インターネット広告の量でも差がついてしまっている。
── 一方で、高齢化もあり、自民党の支持基盤が弱体化しているという指摘もある。

前回の衆院選を振り返る山岸一生元衆院議員(松崎浩一撮影)
山岸有力者の世代交代で、地域に入り込む参入障壁は着実に下がってきていると感じる。また、町内会や消防団で誰々に頼まれたからといって票を入れるというのは薄れてきているだろう。
ただ、ローカルレベルで組織のある政党、例えば公...
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