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亀有でみそだれカツ 『おぢや』|ぐるり東京

Jul 18, 2026 人生 IDOPRESS

イラスト:なかむらるみ

“両さん”でお馴染みの亀有で、人情味あふれる定食屋さんへ

人気少年漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」でも知られる「亀有公園」。ファンの間では観光スポットのひとつとしても人気。

亀有の駅で降りて北口へ出ると、目の前に「こち亀」の両さんの像が立っている。こち亀キャラクター像は亀有の各所に見受けられるが、駅前広場の向こう側には、昭和ムードのこち亀のセンスにもぴったりとハマッた「栄真堂」という古い本屋がある。サブカルにエロ……そして、それなりの値のシールを貼った、けっこうマニアックな歌謡曲やニューミュージックのアナログレコードの棚もあって中1の頃に深夜ラジオでよく流れていた欽ちゃん(萩本欽一)の「何処かにお前が」ってシングル(¥500)を思わず買ってしまった。

道路の中央に立つ鉄柱。柱の周りが環状道路になっている。

両さんがベンチに腰かけた像のある亀有公園の横を北上、山菊米穀店(ここも歴史を感じさせる米屋さんだ)の角を左折、昔の曳舟川の橋柱が残るバス通りを横断して南西方向へ進む。スマホのマップで西亀有4丁目のこのあたりを確認したとき、以前西荻で見かけたようなロータリーの一角があって、ちょっと気になっていた。航空写真のロータリーの真ん中に塔状のオブジェのようなのが写りこんでいたのだが、行ってみるとよくある送電線の鉄塔だった。ひと頃まで田畑が広がっていたような地域なのだろう。

その先の五差路の向こうには、「ホワイト餃子」のファミレス型の店があり、傍らを走る常磐線の高架下には「SKAC」(スクワット・カメアリ・アートセンター)というシャレたスペースがある。無機的な倉庫みたいなところに膨大なアナログレコードが陳列されている。入ったときにクラフトワークっぽいテクノが流れていたので、ふと往年の六本木WAVEあたりをイメージしたが、店内で品物を物色しているのはオタクなエキスを漂わせた外国人ばかりだ。これが渋谷にあっても驚かないが、最近のインバウンドはこういうスポットを探して亀有までやってくるのだ。ホワイト餃子の看板を見て「クーール」とか言っているのかもしれない。

店内にはカウンター、座敷、テーブル席を用意。カウンター前には大きなテレビがあり、まるでスナックのような雰囲気。

今回訪ねる「おぢや」という店も、そこから程近いところにあるクーールな飲食店だ。“カラオケ”の看板を出したスナック風の小店が3軒並んだなかの1軒で、ここもスナックっぽいつくりではあるけれど、「みそだれカツ」というメニューがある。

亀有周辺の料理店を検索していて発見したとき、あのオカユの1種のオヂヤがウリの飲み屋かな……と思っていたら、マスター(店主というよりこの呼び名がしっくりくる)が着ていたTシャツに「小千谷」と記されているのを見て、そうか……新潟の小千谷がもとなのだと知った。マスター・滝澤勝己さんは田中角栄の地元としても知られる中越地方の小千谷の出身、上京後亀有界隈でもう55年くらいこの店をやっている(以前はもっと駅近くだった)。もっとも、御年84歳で上京は集団就職ブームよりも前の昭和30年代前半のようだ。

「スキーのジャンプ競技をやっていてガタイが良かったせいか、上野の駅で青果の卸しとかいろいろ手がけてる吉祥寺の方の社長さんに見込まれましてね、若い頃は青果の運送なんかをやっていたんですよ」

国産の豚肉を使用した「ロースみそだれカツ定食」(850円)。コーヒー付き。

壁にローカルな演歌歌手の宣伝ポスターが貼られているが、料理店の傍ら、そういう歌謡ショーのプロデュースなどもやっているらしい。カウンターの背後には大きなモニターがあって、夜はここもカラオケの酒場になるようだが現在は18時閉店、ランチの人気メニューの「みそだれカツ」はコレを目当てに亀有にやってきてもいいなあ……と思うほど良い味だった。

パリッとしたコロモ、ロースカツならではの脂身、割とあっさりしたミソダレ、ちょっとした遊び心なのか、カツの上に小さなダイコン片とキュウリ片があしらわれているのも可愛らしい。そして、なんといっても、ミソ汁、ゴハン付きの定食で¥850というのはいまどき安い。

新潟にタレカツという甘いショウユダレでいただくカツがあるので、ミソダレカツってのも小千谷あたりのローカルフードか……と当初想像したのだが、これは全くのオリジナルらしい。ミソは当初、奥様の出身地の岐阜や名古屋の八丁ミソを使っていたが、その後越後ミソに切りかえて評判が上がったという。

◆◆◆

今回訪れたお店

みそだれカツ おぢや

住所東京都葛飾区西亀有4-23-22 105


電話03-3604-6461


営業時間10:30~18:00


定休日日曜

※掲載したお店や施設の臨時休業および年末年始・ゴールデンウイーク・お盆休みは営業時間などが変更になる場合がございます。事前にご確認ください。


※2026年7月17日時点での情報です。


※料金は原則的に税込み金額表示です。

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PROFILE

泉麻人コラムニスト

1956年東京生まれ。慶応義塾大学商学部卒業後、編集者を経てコラムニストとして活動。東京に関する著作を多く著わす。近著に『「冗談画報」という楽しい番組があった』(三賢社) 『黄金の1980年代コラム』(三賢社)『夏の迷い子』(中央公論新社)、『大東京23区散歩』(講談社)、『東京 いつもの喫茶店』(平凡社)、『1964 前の東京オリンピックのころを回想してみた。』(三賢社)、『冗談音楽の怪人・三木鶏郎』(新潮新書)、『東京いつもの喫茶店』(平凡社)、『大東京のらりくらりバス遊覧』(東京新聞)などがある。『大東京のらりくらりバス遊覧』の続編単行本が2021年2月下旬、東京新聞より発売された。


なかむらるみイラストレーター

1980年東京都新宿区生まれ。武蔵野美術大学デザイン情報学科卒。著書に、月刊たくさんのふしぎ『かっこいいピンクをさがしに』(福音館書店)、『おじさん図鑑』(小学館)、『おじさん追跡日記』(文藝春秋)がある。泉さんの本では『東京ふつうの喫茶店』『東京いつもの喫茶店』(平凡社)、『大東京 のらりくらりバス遊覧』『続・大東京 のらりくらりバス遊覧』(東京新聞)などでイラストを担当している。


https://www.tsumamu.net/


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