聴覚障害者の国際スポーツ大会「東京2025デフリンピック」の開幕まで3日で500日。会場となる東京体育館(渋谷区)や駒沢オリンピック公園(世田谷区)などでは同日夜、大会カラーにちなんでピンク色にライトアップされる。2017年トルコ大会の陸上競技で金を含む3個のメダルを獲得し、東京大会でも有力候補とされる山田真樹選手(27)が本紙のインタビューに応じ、「当事者の思いをアピールしていきたい」と意気込みを見せた。(聞き手・中村真暁)
山田真樹(やまだ・まき)1997年東京都文京区生まれ。ウェディングドレス店を展開する渕上ファインズ所属。2017年にトルコで開かれたデフリンピックでは、200メートルと4×100メートルリレーでいずれも金、400メートルで銀メダルを獲得した。北区在住。
—現在の心境は。
「当事者の声をアピールしたい」と手話で語る山田真樹選手=東京都庁で
大会100周年でもあり、国内開催は誇らしい。わくわくしている。今まで通り、練習に取り組みたい。2022年大会では、日本選手団に新型コロナウイルス感染が広がり、全員が途中棄権となった。心残りがあり、返り咲きを狙いたい。
—聴覚障害者への理解を広めるため、講演会活動などにも取り組んでいる。
手話が禁じられたり、運転免許証を取得できなかったりと、ろう者の人権は歴史的に軽視されてきた。現在は改められて暮らしは豊かになったが、今も障害を理由に住宅を借りられない人がいるなど、偏見は残っている。アスリートとしてスポーツを通じ、福祉を発展させたい。
聞こえる人は手話を前にすると固まってしまうことがあるが、手話以外にも筆談やスマートフォンの文字起こしアプリなど、コミュニケーション手段はある。偏見をなくすにはもっと互いが出会い、交流できるといい。
—大会に寄せる期待は。
デフスポーツの課題は知名度の低さ。魅力を知ってほしい。陸上では出発音でなく、ランプの光がスタートの合図。そうした工夫を知るとより観戦を楽しめるし、ろうの子どもたちも自身の可能性を諦めずにすむ。挑戦できると伝えたい。
デフリンピックはろう者だけで成り立たない。運営者やボランティア、応援する人…。聞こえる人の力を借りられてこそ、実現できる。いろんな方法で参加してほしい。
東京2025デフリンピック2025年11月15〜26日に70超の国・地域から約3000人の選手が参加し、陸上やサッカー、柔道など21競技を予定。デフリンピックは1924年の第1回パリ大会以降、国際ろう者スポーツ委員会が4年ごとに開いており、日本開催は初。東京体育館や駒沢オリンピック公園、郷土の森総合体育館(府中市)などを会場とする。自転車は日本サイクルスポーツセンター(静岡県伊豆市)、サッカーはJヴィレッジ(福島県楢葉町)で行われる。
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