東京都内に住む小学5年生の悠真君(仮名)はこの4年近く、先の見えない不登校の日々を過ごしている。杉並区立小学校で2022年の春に受けたいじめが、法律で定める「重大事態」に認定されながら、区の調査が一向に終わらないためだ。
なぜ、調査が完了しないのか。取材を進めると、学校や区の対応の不十分さが浮かび上がった。(佐藤航)

悠真君(仮名)のランドセル。これを背負って学校に戻る見通しは立っていない(母親提供)
「一生懸命取り組んでないから、こうなってるんでしょ。一生懸命取り組んでたら、(いじめは)3年間放置されないよ」。昨年11月。いじめ防止に関するパネル展が開かれていた杉並区役所ロビーで、悠真君は居合わせた岸本聡子区長にこう苦境を訴えたという。
岸本区長からの「一生懸命、みんなで(いじめ対策に)取り組んでいくしかない」という言葉に対し、やり場のない思いが一気にあふれ出たのだった。
区が悠真君の母に開示した資料などによると、いじめが始まったのは2年生だった2022年5月18日。クラスの男子グループが女子の腕を引っ張るのを見かけ、悠真君が止めに入ったのがきっかけだった。男子6人は悠真君の顔を殴る、体当たりをするなどの暴力を振るった。
その日の夕方。学童の迎えに来た母に、悠真君は打ち明けた。「ぼく、6対1で殴られた」。翌朝、登校に付き添った父から前日の様子を聞いた校長は「対応します」と言ったが、その後の動きは鈍かった。
校長は加害児童6人を呼び出し、「女の子をいじめるのは良くない」などと諭したものの、悠真君への具体的な暴行内容を個々に聴き取ることはせず、悠真君への謝罪も本人たちに委ねたという。
悠真君は5月24、25日にも腹を殴られる、股間近くの内ももを膝蹴りされるといった暴行を受け、25日夕には学童に迎えに来た母の顔を見るなり、叫んだ。「決めた!不登校!」。母がすぐ学校に連絡すると、校長は意外そうに言った。「担任は『解決した』と言っています」

杉並区教育委員会事務局が入る杉並区役所
苦しむわが子をよそに、危機感のない学校。産休の担任に代わってクラスを受け持った教員が、暴行に関わっていない児童も含めてクラス全員に「謝罪の手紙」を書かせ、悠真君の母に渡そうとするなど、早々に幕引きを図ろうとするような姿勢も目立った。
母の請求で区が開示した校内資料からは、配慮を欠いた場当たり的な対応も発覚した。学校が実...
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