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ロシアの若手写真家「何もないことが普通ではなくなった」…母国ではとても展示できないという作品が今、渋谷に

Mar 24, 2026 仕事 IDOPRESS

ノスタルジックな室内、動物、少女、性的少数者(LGBTQ)のカップル…。政治的圧力により、アーティストとしての表現の自由が大きく制限される中、撮影を続けるロシア人の若手写真家がいる。クリスティーナ・ロシュコワさん(29)だ。日本で2回目となる展覧会に合わせ、初来日した。一昨年、不当逮捕も経験したロシュコワさんに、作品に込めた思いを聞いた。(福岡範行、中川紘希、加藤文)

◆「世界に弱い自分を開いている」姿

東京都渋谷区の展覧会場には、見る人の心を揺さぶる作品が並んでいた。

ロシア人写真家クリスティーナ・ロシュコワさんの作品が並ぶ「unbewitched」会場=東京都渋谷区のPARCO MUSEUM TOKYOで(市川和宏撮影)

血のような赤色がこびり付いた女性の顔の写真。濃厚なキスをする口元の接写。ハート形に集められたミミズがうごめく動画。

ブーツだけを身に着けた2人が屋外で抱き合う写真など、ヌード作品も多い。だが、撮影場所に漂う寂しさからか、モデルの女性の表情がシリアスだからか、エロチックさは感じない。

ロシュコワさんは、ヌードという表現に「正直さ」や「距離をなくすこと」を見いだす。「世界に弱い自分を開いている」姿だと捉えている。

◆「自分を半分くらいしか表現できない」

けれど、ロシア国内での展示は難しい。法規制がアーティストの表現を制約しているという。今回、展示した写真35点、動画3点も「半分か、それ以上」は展示できない作品だと、ロシュコワさんは語る。

展示作品

そのなかでも「絶対に無理」だと例示したのは、意外な1枚だった。純白のドレス姿の女性2人がキスをする写真。背景には緑色の壁が広がり、色彩のコントラストが鮮やかだ。

露骨な性表現や暴力的な表現はないが、ロシアでは、LGBTQに関する情報を肯定的に流布することを全面的に禁じる法律に触れる恐れがある。性の多様なあり方の象徴である「虹色」のピアスやバッジも罪に問われるほどだという。

ロシュコワさんは「クリエーティブの人たちは、自分を半分くらいしか表現できない。LGBTの人たちは自分を1割ぐらいしか、外の世界で見せないんじゃないか」と語る。

◆「私の中の変化も、ロシアの変化も表したい」

作品を紹介するロシア人写真家のクリスティーナ・ロシュコワさん=東京都渋谷区のPARCO MUSEUM TOKYOで(市川和宏撮影)

ロシア出身のロシュコワさんが写真撮影を始めたのは、6年ほど前。国際的な写真専門誌が選ぶ「見るべきトップ20人の若い写真家」に入ったことがある注目のアーティストだ。4月13日まで渋谷PARCO4階のPARCOMUSEUM TOKYOで、展覧会を開催中(小学生以上500円、未就学児無料)だ。

展覧会のタイトルは「アンビウィッチド(魔法が解かれた、夢からさめた)」。2020〜25年の作品から編んだ同名の写真集刊行を記念した。ロシュコワさんは「私の中の変化も、ロシアの変化も表したい」と語った。

◆「政治が『行われている』のをただ見ることしか許されていない」

6年の間には、政治を巡る変化もあった。反政府活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏が2020年に毒殺未遂に遭い、2021年にロシア当局に逮捕され、2024年に刑務所で死亡した。その際、ロシア全土で追悼行動が起きたが、多くの人々が拘束された。

インタビューに答えるロシア人写真家のクリスティーナ・ロシュコワさん=東京都渋谷区で(市川和宏撮影)

今は、ロシアでデモをすることも困難だという。自由な表現活動ができない現状を変えようにも、「何をできるのか正直、分からない。本当に無力だ」とロシュコワさんは言う。「私たちは、政治が『行われている』のをただ見ることしか許されていない世代だ」

一方で、公権力はロシュコワさんの芸術活動を罪だと認定した。ロシュコワさんは「政治的な」つもりではなかった撮影を巡って逮捕され、有罪判決を受けた。

◆国民も、アーティストも分断され

ロシュコワさんによると、逮捕は2024年6月。ロシアで感じる「不自由」のメタファー(暗喩)として日本の緊縛表現を取り入れ、女性を墓地で撮影したことが、「キリスト教信者の気持ちを愚弄(ぐろう)した罪」に問われた。反フェミニスト団体の告発がきっかけだった。検察に懲役4年を求刑されたロシュコワさんは判決直前の今年2月、ロシアを出国。日本での滞在後は欧州での活動を模索する。

ロシア人写真家クリスティーナ・ロシュコワさんの作品が並ぶ「unbewitched」会場=東京都渋谷区のPARCO MUSEUM TOKYOで(市川和宏撮影)

4年前から続くウクライナ侵攻も、ロシアの芸術界に影を落とす。国内が現体制を応援する人たちと、強く反対する人たちに二分され...

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