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末広町で特上親子丼 『鳥つね 自然洞』|ぐるり東京

Oct 16, 2026 教育 IDOPRESS

イラスト:なかむらるみ

老舗のこだわりが詰まった特上親子丼でご褒美ランチ

路地を進んだ先に延びる石段「明神男坂」。かなり急に見えるが、1段1段踏みしめて上って行こう。

銀座線の末広町の界隈は、喫茶店の探訪をしていた頃にも歩いたけれど、そのときは西方の神田明神の方へは行かなかった。アキバ系のアニメやゲームの店が広がってきた駅の南西側の路地から昌平小学校の横を通りぬけて、湯島の方へ行く広い通りを向こう側に渡ると、傍らの横道の先に神田明神男坂の急階段が覗き見える。数えながら68段の石段を上って、神田明神の境内に入った。息の方も上がっている。

鮮やかな朱赤の塗装と青緑の大屋根が印象的な神殿をセンターに置いた、絵ハガキみたいな神社である。荘厳な趣きこそないけれど、都心の定番名所らしいゴージャスなムードが漂っている。日曜夜の人気ドラマ『VIVANT』でもここのロケシーンが何度か出てきたが、ミヤゲ物売場を覗くと、関連のお菓子が並んでいた。外国人観光客や若者の姿が目につく観光スポット的な明神様だが、境内の隅の方には、魚河岸水神社、小舟町八雲神社、大伝馬町八雲神社……といった江戸の周辺町の小社が集まっている。なかに、浦安稲荷神社なんてのもあったが、これは千葉の浦安とは関係なく、江戸の平川の漁師が浦(海)の平安を願って奉納したもののようだ。

歴史と現代文化が交わる東京の観光スポットとして多くの人で賑わう「神田明神」。近年ではアニメやドラマの聖地としても人気もある。

その浦安稲荷脇の狭い石段を下って北側の新妻恋坂(蔵前橋通り)に出てきた。いまは崖下の通りぞいまで高いビルに覆われてしまったが、こうやって下りてきた石段の崖道を振り返ると、まさに山の手の瀬戸際の眺望地に築かれた神社なのだ、とわかる。

新妻恋坂というのは、北裏にある妻恋坂の後にできた新道(といっても大正の震災後)という意味で、こっちが“新妻(にいづま)”ってわけではない。下っていって、末広町交差点の先の栄佐亀(えさき)通りを北上していくと、右側に「鳥つね 自然洞」がある。

落ち着いた雰囲気の店内は、お昼の一息にぴったり。

表の看板は「鳥つね」だけだが、ここは大正元年(明治末年の説もある)に湯島の天神下で始まった「鳥つね」で修業した店主の佐々木久哉さんが、およそ35年前に移店したときに「自然洞」というサブネームを付けたのだ。


夜は鳥鍋がメインになる店だが、ランチの親子丼も随分前から評判になっている。僕が初めて味わったのは90年代くらいだったはずだから、まだ開店してまもない頃だったのかもしれない。とくに「特上親子丼」(限定20食)と銘打たれたものは、鶏肉の食感や半熟タイプの玉子の味が格別だ。

「比内地鶏と名古屋コーチンを使っているんですが、比内のモモとムネ、コーチンのモモとムネ、正確には4種類の肉が入っています」

と、この説明を店主から伺ったのは食べた後だったので、いちいち確かめながら味わったわけではないけれど、肉の硬軟や味にコントラスト感があったことは確かだ。そして、赤(オレンジ)味の色合いの強い玉子も、当初比内かコーチンのものなのかな……と想像していたら、これはまた別の兵庫産「日本一こだわり卵」というブランドらしい。

「もう1つ、オコメも会津の決まった銘柄米なんですよ。熱塩加納という土地の上野さんって農家が作っている『有機米いのち』というオコメです」

1日限定20食の「特上親子丼」(2000円)。1人前につき4個もの玉子が使われ、オレンジ色の黄身が輝く。

熟塩加納というのは、ラーメンで知られる喜多方北西の山間の土地だ。しかし、これほど食材にこだわったこの「特上親子丼」が2000円、というのは安い、といっていいだろう。

京都の親子丼を愛好するようになってから、サンショウをたっぷりとふりかけていただくようになったのだけれど、卓上のサンショウに加えて、付き出しのキュウリの漬物の味もバツグンだった。

ランチメニューは、もちろん通常の親子丼や上親子丼(鶏肉や玉子の種は特上とは異なる)の他、モツ入り親子丼、そして「かつ丼」ってのが気になったが、これはトリカツを使ったカツ丼なのだ。チキンカツ丼などとせず、さも当然と「かつ丼」の品書きを掲げているあたりに老舗鳥屋の矜持が感じられる。

◆◆◆

今回訪れたお店

鳥つね 自然洞


住所東京都千代田区外神田5-5-2


電話03-5818-3566


営業時間11:30~14:00(LO13:30)、17:30~22:00(最終入店20:30、LO21:00)


定休日日曜

臨時休業および年末年始・ゴールデンウイーク・お盆休みは営業時間などが変更になる場合がございます。事前にご確認ください。


※2026年10月16日時点での情報です。


※料金は原則的に税込み金額表示です。


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PROFILE

泉麻人コラムニスト

1956年東京生まれ。慶応義塾大学商学部卒業後、編集者を経てコラムニストとして活動。東京に関する著作を多く著わす。近著に『「冗談画報」という楽しい番組があった』(三賢社) 『黄金の1980年代コラム』(三賢社)『夏の迷い子』(中央公論新社)、『大東京23区散歩』(講談社)、『東京 いつもの喫茶店』(平凡社)、『1964 前の東京オリンピックのころを回想してみた。』(三賢社)、『冗談音楽の怪人・三木鶏郎』(新潮新書)、『東京いつもの喫茶店』(平凡社)、『大東京のらりくらりバス遊覧』(東京新聞)などがある。『大東京のらりくらりバス遊覧』の続編単行本が2021年2月下旬、東京新聞より発売された。


なかむらるみイラストレーター

1980年東京都新宿区生まれ。武蔵野美術大学デザイン情報学科卒。著書に、月刊たくさんのふしぎ『かっこいいピンクをさがしに』(福音館書店)、『おじさん図鑑』(小学館)、『おじさん追跡日記』(文藝春秋)がある。泉さんの本では『東京ふつうの喫茶店』『東京いつもの喫茶店』(平凡社)、『大東京 のらりくらりバス遊覧』『続・大東京 のらりくらりバス遊覧』(東京新聞)などでイラストを担当している。


https://www.tsumamu.net/


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