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日本初公開の巨匠たちの傑作が81点も!近代ヨーロッパ美術の現代に至る流れがわかる「シンシナティ美術館展 ~アメリカに渡ったヨーロッパの至宝~」|ぐるり東京

Oct 30, 2026 教育 IDOPRESS

フィンセント・ファン・ゴッホ 《ポプラ林の中の二人》 1890年 シンシナティ美術館

ファン・ゴッホやルノワール、セザンヌ……。


シンシナティ美術館が所蔵する超有名画家たちが描いた傑作の


実物を初めて目にできる貴重な機会!

アメリカ・オハイオ州にあるシンシナティ美術館は、市民たちの情熱によって作られた、アメリカ合衆国の中で最も長い歴史を持つ美術館のひとつだ。ことにヨーロッパ近代美術のコレクションには、誰もが知る巨匠たちの傑作がいくつも。本展で展示される作品の多数が初来日だ。

市民が創った歴史ある美術館の収蔵品が初来日!

アメリカ・オハイオ州に、ヨーロッパ近代美術の殿堂とも言える美術館があるとは、アートに詳しい人でなければ知らないかもしれない。同州で3番目に人口の多い川沿いの都市シンシナティにあるシンシナティ美術館。1881年に創立された、アメリカで最も古い美術館のひとつだ。古代エジプトやギリシャ、ローマ、ヨーロッパ、アジア、アフリカなどの美術品7万3000点を超す収蔵品を持つ。ヨーロッパ近代美術についても、新古典主義から印象派、キュビスム……と至る中での著名画家の作品がほとんど揃っていると言っていいだろう。

シンシナティまで行かなければ鑑賞できなかった作品の数々が本展で見られるのは貴重な機会。今回展示される84点中、なんと81点が初来日を果たした。

まず、シンシナティ美術館の歴史を説明したい。同館は市民の力で建てられた美術館だ。アメリカ建国100年の頃、「街に本物の文化を根付かせたい」と地域の女性たちが美術館設立の声を上げ、準備が始まった。開設時は既存施設の一部を使ったものだった。しかし市民の共感は大きく、富豪は多額、庶民は少額ながらも寄付を続けた。自前の建物ができたのは1886年。以後、拡張を重ねて現在に至る。

145年間の歴史の中でこつこつと収集されてきたコレクションは、寄贈されたものもあれば購入したものもある。

「私たちのコレクションは人々の心に響いてきました。それはシンシナティ市民一人ひとりの誇りです」と、同館ヨーロッパ絵画・彫刻・素描部門学芸員のピーター・ジョナサン・ベルさん。「そして、館外初の展覧会として最初に日本に来ました。ヨーロッパ近代美術の歴史を振り返っていただける内容になっています」

展示は「序章」を経て「伝統」「革命」「モダニズム」の章に分かれている。それはまさに、巨匠たちの作品を通して近代絵画の歩みを通観する流れだ。

さっそく館内を巡ってみよう。

アカデミズムへの反逆からファン・ゴッホ、ゴーギャンの名作へ

「序章」はわずかなスペースだ。展示されている絵画は、画家の親しい知人を描いた肖像画。アングルは音楽家、ライブルは彫刻家、モディリアーニは画家で詩人の友人をモデルにしている。シナールによる彫刻のモデルも、知人の女性画家あるいは芸術サロンを主宰した王女とされる。時代は1800年初頭から1900年代前半と広い。古典的なリアリズムから革新的表現に至る過程と共に、彼らが過ごした芸術環境までも、たった4点の作品で示唆する構成にはなかなかうならされる。

アメデオ・モディリアーニ 《マックス・ジャコブ》 1916–1917年頃 シンシナティ美術館

第1章「伝統」に進む。各章内も時代の流れに沿って3つのセクションに分かれている。「伝統」の最初は「アカデミー」。19世紀中盤のフランスでは、国立の美術アカデミーによる画題のヒエラルキーが固守されていた。王を巡る歴史画や、国が認める神話の題材が上位だ。庶民の暮らしを描くことはない。異国へのロマンティシズムもあるが、描くのは半裸の奴隷女性であったり、上流の家に飾られた日本の工芸品を眺める姿であったり(ヨーロッパでジャポニズムが始まっていた時代なのだ)。

「フランスの風景画」セクションでは、1830年頃には画家たちが外に出て風景を描くようになったことがわかる。自然の光を活かした表現も生まれていく。パリの南東にあるバルビゾン村は人気だった。そこに集うグループはバルビゾン派と呼ばれていく。ここではコローやルソーの作は必見だろう。

そして「レアリスム」セクションは、国立アカデミー的な絵画への反旗だ。庶民の素朴な生活風景を描こうとした作品はミレー、マリオン、ブルトンなど。農耕や工業などの労働者の姿がリアルに表現されていく。当時の人々はさぞ驚いたことだろうと察する。そんな絵画はそれまでなかったのだから。

ポール・セザンヌ 《パンと卵のある静物》 1865年 シンシナティ美術館

第2章は「革命」。ひとつめのセクション「反逆者たち」で観る絵は確かに攻撃的だ。ここまでのものとは全く違う。リアルさや精緻さはなく、筆致は荒々しい。破天荒と言っていいくらいだ。並ぶマネ、セザンヌ、クールベなどの作品を私たちは既に知っている。だからその一つひとつに違和感はない。だが、こうしてアカデミーからの流れの中で観たらどうだろう。彼らの、伝統にあらがうこの爆発的な表現はどれほどの経験の末に生まれたのか……。若き画家たちの苦闘を思わざるを得ない。

そして次のセクションはいよいよ「印象派」だ。色をのせて表す戸外の光、風景や植物、太陽のきらめき、それを実現する補色の効果……。ルノワール、モネ、ブーダン、バジール、シスレーなどの作品から、絵画の新しい時代が感じ取れる。ドガ作の2点のブロンズ彫刻も見逃せない。

ポール・ゴーギャン 《マハナ・マア》 1892年 シンシナティ美術館

20世紀の大きな変容や、2つの新発見にも注目!

第3章は「モダニズム」。フランスやドイツの芸術家たちはさらに前衛的な表現を生み出していく。ここはもう“現代美術”に近づくプロセスと言えそうだ。

最初のセクション「表現主義」でいきなり驚かされる。ここに至る前までの絵画は、自由さを求めながらも、まだ写実的な感覚があったと思う。ところがどうだ。画家自身の内面の発露というべきか。ユトリロが描く街角はまだ具象的といえるが、彼の孤独な心を感じさせる。スーティンやデュフィ、ルオー、シャガールなどの作は、現実の風景や人物を題材にしながらも、本人の心象風景と言っていいだろう。

次の「抽象」セクション。20世紀に入り、いよいよキュビスムやシュルレアリスムが誕生してくる。1910年にピカソが描いた《グラスとレモンのある静物》はキュビスムを特徴づける重要な作品だ。テーブル上にナプキンやワイングラス、果物を入れたボウル、スライスしたレモンなどがあるそうだが、ハテ、どれが?こんな描き方を編み出すのはやはり天賦の才なのか。いやピカソだけではない。グリス、ブラック、グレーズ、レジェ……、見えている世界を抽象的な形に置き換えて描く画家たちの挑戦が続く。

そして最後のセクションが「具象」だ。さまざまな実験的表現がアートの世界をふくらませていった一方で、具象的絵画の美もまた消えることはない。いや、そこに戻ろうとする人々も多かったのだ。ホドラーの大作《聖なる時間》は圧巻。ローランサンやドランによる人物画も美しい。ピカソによる写実的な「女性像」と、やはり女性を描いていながら大きく抽象化された《抽象(頭部)》を比較して観られるのも面白い。

フェルディナント・ホドラー 《聖なる時間》 1907–1911年頃 シンシナティ美術館

この展覧会では2つの発見も解説されている。

ひとつはセザンヌ20代の作品《パンと卵のある静物》。シンシナティ美術館の保存修復家が調査する過程で2022年、静物画の下に肖像画が描かれていることがわかったのだ。おそらく自画像と思われるX線撮影画像も展示されている。若く貧しかった画家は、新しいカンヴァスを買うことなく、自作の上にまた別の絵を描いたのか。

もうひとつはミラレスの《休息》だ。本展に向けて汚れやニスの変色を取り除く中、画家本人のサインが現われた。この作は1921年にシンシナティ美術館に収蔵されて以来、表面のサインにある通りベルギーの画家ステヴァンスの作とされてきた。収蔵以前のいつの頃かはわからないが、より売りやすいように、偽のサインを入れられていたのだ。この展覧会を機に、本当の作者が判明したわけだ。

会場を出る通路は、ファン・ゴッホの《ポプラ林の中の二人》のイメージに包まれている。鮮烈な若緑に囲まれて歩けば、今では巨匠とされる画家たちがいかに考え抜き、表現を模索してきたかが改めて胸に染みる。初めて観る著名画家の作品の数々から知る、ヨーロッパのアートの軌跡。これらのコレクションを味わう機会を提供してくれたシンシナティ美術館にも心からの敬意を表したい。

近代ヨーロッパ美術の変遷を


巨匠たちの作品を通して知る展覧会


本物の迫力には心打たれたわ!

シンシナティ美術館展 ~アメリカに渡ったヨーロッパの至宝~


会期:10月10日(土)~2027年1月10日(日)


会場:上野の森美術館(東京・上野公園)


〒110-0007 東京都台東区上野公園1-2


開館時間:10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)


休館日:会期中無休※12月31日、1月1日も開館


観覧料:一般2,400円、高校・専門・大学生1,500円、小・中学生800円


問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル 全日9:00~20:00)


https://www.cincinnati-art2026.jp


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