清らかな水が流れる等々力渓谷。橋の後方にあるのが不動の滝=いずれも世田谷区で
階段を下るたび、ひんやりとした風がほおをなでる。東京23区唯一の渓谷「等々力(とどろき)渓谷」(東京都世田谷区)に隣接する等々力不動尊から下りた先の一角。「不動の滝」と谷沢川のせせらぎ、野鳥のさえずりが聞こえ、自然の音に包まれていた。
訪れた7月下旬の気温は37度。立っているだけで汗が噴き出す暑さだったが、滝前に行くとふわっと冷気が漂い、落ち着いた。
流れ落ちる水の音が「轟(とどろ)いた」ことから、等々力の地名の由来になったとの言い伝えもある滝だ。とどろくほどの迫力は感じないが、通勤途中にほぼ毎日、滝に立ち寄るという稲城市の会社員長間佑介さん(43)は「風が全然違う。涼しく、癒やされます」
この一角を除き、渓谷の大部分は現在、立ち入りができなくなっている。昨年7月以降、伐採や剪定(せんてい)が必要な「危険木」が約50本見つかったからだ。
等々力渓谷に隣接する等々力不動尊
それでも、等々力不動尊で参拝し、この場所に下りてくる観光客らと出会った。米国から来日した家族4人は「緑が美しい。静かで、日本の文化を感じる」と笑顔。福岡市に住む60代の両親を連れた区内の男性会社員(33)は「体感では3度くらい涼しい。早く通れるようになってほしいです」
区は来年度内の全面開放を目指し作業中。「都会のオアシス」の復活を願う声は多い。(奥野斐)
<等々力渓谷>武蔵野台地の南端を谷沢川が浸食してできた渓谷。1974年に区立公園として開園した。渓谷の遊歩道は通行止めだが、川の下流部にある等々力不動尊と近くの日本庭園は利用できる。不動尊までは東急大井町線等々力駅から徒歩8分。
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猛暑の中で一息つける場所を、写真とともに紹介します。随時掲載します。