東京変貌〈追い出される住民〉⑦(全7回)
2025年11月末、大崎駅西口(東京都品川区)の再開発を巡って新たな動きがあった。
再開発の検討を進める準備組合が、説明会を開き、2026年春にも都市計画の行政手続きに入る方針を住民たちに明らかにした。

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私たち追い出されるの?愛着あるマンションに「オフィスビルへの建て替え」計画が…大崎駅前再開発の裏で
再開発を前に進めるとの話に、たまらず70代の狩野恭子さんが質問に立った。
狩野さんは、再開発の予定地に立つマンション「ニュー大崎」で40年以上暮らし、今は1人暮らしだ。
「うちのニュー大崎の管理組合に耐震診断をしてくださいと何回もお願いしているのに、何でうやむやになっているのでしょうか。私は(裏手のマンションに)移りたいと思いません」
なんとかして今のマンションに住み続けることができないか。耐震診断して問題なければ建て替える必要もない。耐震診断はいちるの望みだった。

自身が暮らすマンション「ニュー大崎」への愛着を語る狩野恭子さん(中村千春撮影)
準備組合からの回答は、にべもなかった。「質問の趣旨は理解したんですが、お答えは控えさせていただきます」
狩野さんにとって、ニュー大崎は亡き夫との思い出が詰まった住まいだ。3年前に亡くなった夫も「こんな便利なところないよな」と気に入っていた。
入居したのは、「駅から近く、雨にぬれない」という広告を見た父親の紹介だった。結婚を控えていた狩野さんの「新居に」と頭金まで出してくれた。
「絶対私、ここにしがみついてでもいたいです。『ここで楽に暮らしてくれよ』っていう、うちの父の魂が入ってますから」
準備組合は大崎駅西口の駅前一帯を再開発し、オフィスビルに建て替えたいと考えている。駅前の住民たちには、裏手に建設中のタワーマンションへの移転を勧めている。
狩野さんによると、一時期、準備組合の事務局とおぼしき職員から電話で「隣にマンションができるから移ってくれませんか」と盛んに勧誘があったという。
ただ、二転三転する準備組合の説明に不信感が強まった。そもそも愛着のある住まいを、今になって離れたくない。

再開発後の生活も気がかりだった。タワーマンションの管理費は高額になると聞いていたからだ。
今、狩野さんが払っている管理費は、修繕積立金と合わせて月1万7000円。月10万円ほどの年金収入しかない狩野さんは、裏のタワーマンションに移転して暮らしていけるのか不安で仕方ない。
狩野さんは「ここはお年寄りが多いから管理費を払うのだって大変なことになる。管理費が高額になったら払いきれませんよ」と話す。

管理費を払えなければ、家を売って出て行くしかない。そうなれば転居先を探さなければならない。
この年で転居先が見つかるのだろうか。
最近、心配になって近くの不動産会社に、貸してくれる部屋があるかを問い合わせてみた。すると「高齢のお一人様はお断りしています」とのことだった。別の会社からは「孤独死されたから困るので」と告げられた。
西口駅前の再開発予定地には、ニュー大崎をはじめ5棟のマンションが立つ。いずれも築40年を超える。狩野さんのように完成...
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