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西浅草で台湾メン 『来集軒』|ぐるり東京

Jul 4, 2026 旅行 IDOPRESS

イラスト:なかむらるみ

かっぱ橋道具街を歩いて、老舗の町中華へ。台湾メン——っていったいどんな料理?

調理道具や食器、食品サンプルなどの店が軒を連ねる「かっぱ橋道具街」。

浅草は以前の喫茶店探訪の連載も含めてもう何度も歩いているけれど、今回は西浅草の方の店を訪ねるので田原町で降りて、かっぱ橋の方からアプローチすることにした。

菊屋橋の交差点のランドマーク、ニイミ洋食器店のコックさんの立体看板(創業者がモデルだという)を拝むように仰ぎ見てから「かっぱ橋道具街」の通りに入っていくと、やはり、圧倒的に外国人の観光客が多い。鍋や茶碗などの実用道具から丼飯や寿司を象った食品サンプルの店まで、ミヤゲモノを物色する外国の人たちが溜まっている。しかし、食堂のショーケースにあるような天丼やカツ丼のサンプルにはだいたい1万くらいの値札が付いていて、けっこう高いものなのだ。包丁とか刀の売場の傍らにシャレたカフェスペースを設けたような最近の店も見受けられる。ちなみに、菊屋橋、かっぱ(合羽)橋……と橋名が付いているのは、この通りぞいを大正の震災の頃まで山谷堀や吉原の方からくる新堀川というのが流れていたからなのだ。

道具街90周年を記念して建てられた「かっぱ河太郎像」。

道具街の東側の路地に入ると、西浅草の寺町の領域になる。ひときわ大きな堂宇を見せた東本願寺の裏手を通って、戦前からのお好み焼屋の「染太郎」を横目に東進すると、次の辻角に立つ「台東旅館」という木造旅館は昔、取材を兼ねて泊まったことがある。まさに純然たる昭和前期の日本の宿、って感じのところだが、ここも近年はインバウンドに大人気の1軒になっているようで、玄関に英字の張り紙が並んでいる。

台東旅館の手前の道を北進すると、正面に「どぜう」の看板を出した飯田屋が近づいてくるけれど、飯田屋のあるかっぱ橋本通りの1つ手前の十字路を右折すると、左に「来集軒」という素朴な中華料理屋がある。3階建てビルの1階の店だが、創業75年を越える浅草の町中華の草分けだ。

お店の壁一面に飾られた著名人のサイン色紙。長年たくさんのファンに愛されていることがうかがえる。

いまは女性2人(母と娘)で店をやっているようだが、20年ほど前に僕がはじめてきた頃は創業したオヤジさんが健在で、監督係のような立ち位置で店にいらっしゃった。その当時品書きに見つけて興味本位で注文したのが“台湾メン”という1品。

台湾メン——いまどきの人はカラいラーメン系のものを想像されるかもしれないが、これは塩味のヤキソバなのである。品書きの並びに「カタヤキソバ」や「ソースヤキソバ」があるけれど、これは「やわらかいヤキソバ」にあたるもので、黄色いラーメン用のメンにチャーシューやニンジン、キャベツ、キクラゲなどの具が混ざった感じは、「上海ヤキソバ」にも近い。

なぜこれを台湾メンと命名したのか……尋ねてみたが、先代の時代から「よくわからない」らしい。現在、店を仕切る娘さんの祖父の兄が昭和25年(1950年)に立ち上げたという来集軒、これといって台湾との因果関係があったわけではないという。昭和20年代、中華料理の土地のなかでも身近だった台湾の名をなんとなく頭に付けた、ってとこかもしれない。

「台湾メン」(900円)。シャキシャキの野菜とチャーシューがたっぷり入った塩ヤキソバ。

壁にずらりと芸能人の色紙が飾られているけれど、昔の芸人や落語家のものが目につく。「六区あたりの演芸場に出た芸人がよく来た」という話を以前先代から伺った気がするけれど、六区の方へ渡るまでもなく、この店のすぐ先の浅草ビューホテルのところには、松竹歌劇のハコの浅草国際劇場が存在した。

「手作りシューマイ」と品札に記された、550円(4個入り)のシューマイは、六区に派手な興行看板が並んでいた頃からの人気メニューで、白い皮の部分が多い素朴な味はいかにも昔の浅草の食堂のシューマイだ。

僕らが取材で訪れたのは、ランチの客波がひける3時過ぎだったが、それでも1人、2人と単身の客が入ってくる。そのたびに、年配のお母さんの方が「きょうは?」とお客に伺いを立てる。「カタメンのモヤシソバ……」なんて通っぽい注文が聞こえたが、常連さんに違いない。


◆◆◆

今回訪れたお店

来集軒

住所東京都台東区西浅草2-26-3


電話03-3844-7409


営業時間12:00~18:00


定休日火曜

※掲載したお店や施設の臨時休業および年末年始・ゴールデンウイーク・お盆休みは営業時間などが変更になる場合がございます。事前にご確認ください。


※2026年7月3日時点での情報です。


※料金は原則的に税込み金額表示です。

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あの町、このメシで訪れたお店MAP


PROFILE

泉麻人コラムニスト

1956年東京生まれ。慶応義塾大学商学部卒業後、編集者を経てコラムニストとして活動。東京に関する著作を多く著わす。近著に『「冗談画報」という楽しい番組があった』(三賢社) 『黄金の1980年代コラム』(三賢社)『夏の迷い子』(中央公論新社)、『大東京23区散歩』(講談社)、『東京 いつもの喫茶店』(平凡社)、『1964 前の東京オリンピックのころを回想してみた。』(三賢社)、『冗談音楽の怪人・三木鶏郎』(新潮新書)、『東京いつもの喫茶店』(平凡社)、『大東京のらりくらりバス遊覧』(東京新聞)などがある。『大東京のらりくらりバス遊覧』の続編単行本が2021年2月下旬、東京新聞より発売された。


なかむらるみイラストレーター

1980年東京都新宿区生まれ。武蔵野美術大学デザイン情報学科卒。著書に、月刊たくさんのふしぎ『かっこいいピンクをさがしに』(福音館書店)、『おじさん図鑑』(小学館)、『おじさん追跡日記』(文藝春秋)がある。泉さんの本では『東京ふつうの喫茶店』『東京いつもの喫茶店』(平凡社)、『大東京 のらりくらりバス遊覧』『続・大東京 のらりくらりバス遊覧』(東京新聞)などでイラストを担当している。


https://www.tsumamu.net/


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