夏に子どもの間で流行する手足口病の感染が全国各地で広がっている。国立健康危機管理研究機構(JIHS)が21日に公表したまとめによると、12日までの1週間に全国で報告された1医療機関あたりの感染者数(速報値)は9.12人に上り、35都府県で、国が警報の目安と定める5人を超えた。特別な治療法がなく、まれに重症化するリスクもあり、専門家は手洗いの徹底の他、ゼリーなどによる水分補給を呼びかける。(中川紘希、太田理英子)
「今まで経験したことのないつらさだった」
東京都豊島区の会社員女性(31)は「こちら特報部」の取材に、家族4人が手足口病に感染した経験を振り返った。

7月初旬、長男(3)の発熱で保育園から呼び出された。発疹はほぼなく3日で長男の熱も下がったが、女性に39度の熱が出た。その数日後に口内炎ができた。
「のどがめちゃくちゃ痛くて、つばも飲み込めなかった」。熱で寝込んでいたため、口にたまったつばは空のペットボトルに入れた。のどを通りやすい冷えたおかゆの他、ゼリーやプリンを食べて空腹をしのいだ。声を出しても痛みがあり、長男に絵本の読み聞かせをせがまれてもできなかった。
家族でタオルを分けたり次亜塩素酸水で消毒したりして感染対策に努めたが、その後、夫(32)と生後2カ月の長女も相次いで感染した。長女は口をすぼめてミルクを飲みたがったが、哺乳瓶を近づけると口が痛いからか、泣いた。「乳児は発熱すれば入院しかねないので心配だった」と話す女性。「『手足口病には大人は感染しにくい』という油断があった。ここまで大変になるとは思わなかった」と語った。

手足口病に感染した女性の長女の足の発疹=東京都豊島区で
手足口病は、口の中や手足に水疱(すいほう)を伴う複数の発疹ができるウイルス性感染症。乳幼児を中心に流行する。原因となるウイルスは、「コクサッキーウイルス」や「エンテロウイルス」。夏に流行し、7月下旬にピークを迎える傾向がある。
発疹は感染から3〜5日後に生じ、発熱や口内炎、のどの痛みなどを伴うことが珍しくない。基本的に数日間で回復するが、まれに髄膜炎や脳炎、心筋炎といった重篤な合併症を引き起こすことがあるという。大人が感染するケースもみられる。
厚生労働省などによると、くしゃみなどの飛沫(ひまつ)や接触が主な感染経路となる。患者の約半数を2歳以下が占めるとのデータもあり、乳幼児が集団生活をする保育施設などでの感染に注意が必要とされている。

厚生労働省(資料写真)
JIHSのまとめによると、7月6〜12日の間に全国約2000カ所の定点医療機関から報告された感染者数(速報値)は、2万557人に上った。1医療機関あたりの感染者数は9.12人で前週の1.29倍に。前年同期比では16倍に膨れ上がっている。過去10年以内で、同時期としては3番目の多さとなった。
国は警報を出す際の目安を、1医療機関あたりの感染者数が5人に達したときと示している。JIHS公表の都道府県別のデータによると、この警報基準を超えたのは35都府県に上り、27都府県だった前週の時点からさらに拡大している。このうち千葉県が15.4人と最多。奈良県が14.83人、埼玉県が14.78人、島根県が14.64人、東京都が14.33人と続いた。各自治体は、「流行警報」を発令するなどして注意を呼びかけている。
全国で手足口病の感染が広がる中、医療機関は対応に追われている。報告された1医療機関あたりの感染者数が全国最多となった千葉県では──。

「手足口病の患者は毎日10人弱ぐらいは来ていて、非常に多い状況だ」と話すのは、千葉市内の小児科クリニックの松永正訓(ただし)院長。「大流行した2024年のときと増え方が似ている」
患者は、ほとんどが未就学児。保育施設での感染が多くみられる一方、家庭内できょうだいからうつるケースも目立つ。症状は発疹に加え、「発熱やのどの痛みを訴える子どもが多い」。発熱の後に発疹が生じることもあるという。
手足口病にはワクチンや特効薬はなく、対症療法が中心。...
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