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【白髭のシュークリーム工房】トトロのシュークリームにもお店にも、『となりのトトロ』の世界が広がってほっこり|ぐるり東京

Oct 20, 2026 ai IDOPRESS

ちょこんとおすましした姿が愛らしい「トトロのシュークリーム」。頭に緑の葉を載せているのは、カスタード&生クリーム700円。ほかにもチョコレートクリーム740円、季節のシュークリームがある。

小田急線・世田谷代田駅から歩いて数分。都内とは思えないような緑豊かな遊歩道を進むと、店の前のヒマラヤスギ、背後のケヤキの大木に守られるようにして、一軒の洋館が現れる。入り口にはトトロの看板。ここが、世界で唯一の「トトロのシュークリーム」を販売する「白髭のシュークリーム工房」だ。「あったらいいね」のひと言から始まった愛らしいシュークリーム。多くの人に愛される商品となるまでの道のりを語っていただいた。

きっかけは、車の中のひと言

シュークリームのトトロの顔を見ていると、食べられない。というか、どこから食べたらいいものやら……。しばらく逡巡して、やはりくるりとお皿を回して、背中からそっとフォークを入れて口に。普通より少し厚くて硬めのシュー皮の中に、トロッとしたカスタードがたっぷり。外見を裏切らない、トトロらしいやさしい甘さが広がって、結局どんどん食べ進めてしまった。

そもそも「シュー」といえばフランス語でキャベツのこと。焼き上がった生地の形がキャベツに似ていることから「シュークリーム」の名がついたという。その「シュー」を、トトロの形に膨らませるなんて、いったいどうやって作っているのだろう?そして何より、なぜトトロをシュークリームにしようと思ったのだろう?

創業者の「初代白髭さん」こと宮崎至朗(みやざきしろう)さんに伺った。


宮崎さんは、大手広告代理店に勤めていた。退職後はグラフィックデザインの会社を営んだり、ジブリ作品のグッズの開発・製造・販売を手がけたりしたが、アクシデントで撤退を余儀なくされた。さて、次の一手はどうするか……と考えていた時期のこと。

妻を仕事場へ送る車の中で、ふと妻が「トトロのシュークリームがあったらいいね」とつぶやいた。提案というほどおおげさなものではなかったが、そんな何気ないひと言がきっかけとなって、トトロのシュークリーム作りが始まった。

「トトロのシュークリーム」完成までの長い道のり

シュークリームは、種類によって頭に載せているものが違う。みんな並んで、「連れて帰って」と見つめてくる。

ところが白髭さんには、洋菓子づくりの経験がまったくないばかりか、どちらかというと和菓子が好きで、ケーキに興味もなかった。シューの作り方も知らなかったが、生地が膨らんであの形になることはわかった。では、どうやったらトトロの形にできるのかとケーキ好きの知人に作り方に相談してみたものの、要領を得なかった。

途方に暮れながら訪ね歩いた末にたどり着いたのが、合羽橋道具街だった。今もお付き合いを続けているという吉田菓子道具店で相談したところ、「スポンジケーキならわかるが、なぜシュークリームなのか」と店長に首をかしげられた。しかし専門家らしいアイデアで、金属の型に生地を入れて焼くしかないだろう、という方向が見えてきた。

最大の難関は、トトロのピンと立った耳。型は粘土で原型を作り、アルミで特注した鋳物。耳を下にして生地を流し込む方法にたどり着く。ところが焼くと、生地が膨らむと同時に浮き上がってしまうため、耳が形成されない。知り合った若いパティシエの力を借りて試行錯誤の日々が続く。

型に蓋をしても膨らむ力が強くてうまくいかない。そこで考え出したのが、蓋をバネで押さえる仕組みだ。設計図を描いては下町の鉄工所を回り、何人もの知恵を借りて、ようやく金型とバネを生かす台ができあがった。この仕組みは特許も取得した。焼き方にも工夫があり、ようやくトトロの形のシューができるようになるまで、なんと3年かかった。

そんなに苦労してたどり着いた方法を聞いてしまっていいのだろうかと心配になったが、初代白髭さんは笑って言う。「作り方を知ったからといって、すぐにできるものじゃない。苦労ばかりです。真似はやめた方がいいですよ」。なにしろ、耳がちゃんと立ったトトロができるまで、焼くだけで1時間。オーブン1台で最大24個しか焼けないので、ひたすら作り続ける。大量生産はできないのだ。

「キャラクターは食べ物にしない」ジブリの唯一の例外

もうひとつ、高いハードルがあった。ジブリにはもともと、キャラクターを食べものにしてはならないという、宮崎監督の方針があったのだ。ようやくできたトトロの型のシュー皮一つを持ってジブリにプレゼンしたのだが、メインスタッフの答えは否定的だった。それでも鈴木プロデューサーは「ぼくはいいと思いますよ」と耳打ちしてくれた。

そこまでがんばった白髭さんは開発を続け、ついにトトロのシュークリームは、メインキャラクターの食べ物としては唯一の公認商品となる。試作から許可、商品化までを合わせると、開店まで5年の歳月が流れていた。それが2007年のこどもの日。杉並区高井戸の10坪の物件でのスタートとなった。

トトロの目鼻を付ける作業の傍らには、付けるときの注意書きが。ちょっとした位置で、容貌が変わってしまう。

いよいよ本格稼働したのだが、同じレシピ、同じ時間、同じ温度、同じ手順で焼いても、焼き手が違えば仕上がりが違う。今は4人の職人が焼いているが、白髭さんは焼き上がりを見ただけで誰の仕事かわかるという。それほど、繊細で難しいものなのだ。トトロの耳や眉間に穴があきやすい原因も、いまだにはっきりしない。理屈では説明のつかない、職人の世界なのだ。

目と鼻のパーツを付けていくのも、手作業。これで表情が決まってしまうので、大事な仕上げだ。すべてに手がかかる。それでも手間を惜しまずに作り続けている。「かわいいだけでは飽きられる。おいしくなければダメだ」。その信念が、18年の歳月を支えてきた。

トトロの世界観にふさわしい店舗との出合い

『となりのトトロ』の物語から飛び出してきたような代田店。駅からの道筋も歩くのが楽しいロケーション。

店舗と工房を世田谷区代田に移したのは、開店から5年ほど過ぎた頃。手狭になって移転先を探していたところ、人づてにこの物件の話が舞い込んだのだが、緑の中に包まれるような洋館にひと目で心を奪われ、ここに決めたという。よくぞこんなにトトロが住んでいそうなロケーションがあったものだと思うほど、ピッタリな物件。四季に花が咲き、葉の色が変わり、落ち葉の掃除はたいへんだが、鳥の声も響く。

店に入ると、左手には焼き菓子、右手には焼き立てのシュークリームが並ぶ。トトロをはじめ、ジブリ作品のキャラクターの小物も飾られ、眺めているだけで楽しい空間だ。

2階のベーカリーカフェは別経営の店だが、トトロのシュークリームはメニューに入れてもらっているので、ここでお茶といっしょに楽しむこともできる。

次々に訪れるお客さんには外国人の姿も多く、店とトトロのシュークリームといっしょに写真を撮ったりして満喫している。

「駅からは近いですが、まわりにはなにもない住宅街で、通りがかりに寄るような場所ではありません。だから、店舗としていい場所かというと、そういうわけではないのですが」


とおっしゃるが、なにしろこの商品力で、“わざわざ探してでも来る店”になっているのだ。

「トトロのクッキーBOX」は、4枚入り650円のほか、9枚入り、24枚入りなど。またきのこ、どんぐりなどトトロが渡してくれそうな「森のおみやげ」のバリエーションも。

トトロのシュークリームだけでなく、小さなトトロや、ドングリ、葉っぱ、きのこといった森の仲間たちをかたどったクッキーもかわいらしい。かわいいだけでなく、原材料は小麦粉、バター、砂糖のほか、ナッツや卵など、身近なものばかり。お母さんが子どもに焼くクッキーのような安心材料で、歯ごたえや味も手作り感いっぱい。それでいながら、形は真似できないフォルムと表情。この魅力には勝てない。

シュークリームはすぐに食べないとならないが、クッキーなら日もちするので、お土産にするにもいい。

吉祥寺の店舗には限定「猫バスサンド」

吉祥寺店限定で販売している「猫バスサンド」900円。細かい顔などは1枚1枚手描きしている。レーズンバタークリームがはさまっている。

2018年には、2店舗目として吉祥寺店を開いた。製造はすべて代田の工房で行い、毎朝クリームを詰めて吉祥寺へ。三鷹の森ジブリ美術館からも近く、日によってはこちらの方が販売数が多いこともある。開店前から20人ほども列になることも。宣伝は一切していないが、SNSなどで知って、国内外の人たちがやってくるのだという。

開業当初は、1日の販売目標がたった20個。事業計画書に「20個」と書いたとき、融資担当者は目を丸くしたという。それが今では、夏場でも平日300個、土日500個。年末などには1000個近くを焼く日もある。それでも、ロスが出ないよう調整しながら、毎日完売を目指して作っている。

また遠方に住む家族や友人に届けたい、というお客さまの声に応えて生まれたのが、冷凍のシュークリームだ。シューアイスのようにも食べられるし、解凍すればシュークリームにも戻る。ところが今あるシュークリームをそのまま冷凍しても、クリームが解凍に耐えられない。そこでクリームのレシピを変えて、解凍しても品質を落とすことのない4種類のクリームを誕生させた。これで全国どこにでも発送できる「おとどけトトロ」が完成した。

もうひとつ、吉祥寺店限定で販売しているのが、「猫バスサンド」だ。猫バスに小さなトトロまで乗車している手の込んだクッキーに、レーズンバタークリームをはさんだ一品。顔などの線は1本ずつペンで描いて焼き上げる。間のバタークリームはほんのりラムが香り、レーズンも柔らかくてブドウの味をしっかり残していて、アーモンド風味のクッキーとの相性抜群。たいへん手が掛かるので、数量限定。シュークリームもだが、売り切れ御免の人気商品だ。

完成して発売するまで5年もかけ、毎日作って販売するのにも手をかけ、時間をかけていては、少々興ざめな言い方をすれば、経営的には難しいだろう。しかし、利益よりもおいしさ、かわいさ、わくわく感を優先し、ロスも出ないように細かな調整をして大切に生み出されるシュークリームやクッキーは、大量生産はできないけれど、今日も多くの人に笑顔を届けているのだろう。あまりのかわいさにためらいながらも、口に入れたときの幸福感にとろける姿が、目に浮かぶようだ。

マネジメントと商品開発を主導しているのは、長男の陽介さん。現在は二代目白髭として、リーダーシップを発揮している。

<今回の取材先>

トトロが並んで迎えてくれる店舗の看板に期待感が膨らむ。

白髭のシュークリーム工房

平成19年(2007年)創業。小田急線世田谷代田駅から徒歩2分。小田急線・京王井の頭線下北沢駅からは徒歩6分。製造・販売には、社員7人、学生アルバイトなども含めると全部で30人で運営している。店頭での支払いは現金のみ。電話予約して店舗で受け取れるほか、ECサイトではクッキー類や冷凍の「おとどけトトロ」、オリジナルグッズが購入できる。


<データ>


住所東京都世田谷区代田5-3-1


電話03-5787-6221


営業時間10:30~18:00(トトロのシュークリームは売り切れ次第終了)


定休日火曜(祝日の場合は水曜)


URLhttps://shiro-hige.net/

※掲載したお店や施設の臨時休業および年末年始・ゴールデンウイーク・お盆休みは営業時間などが変更になる場合がございます。事前にご確認ください。


※2026年10月20日時点での情報です。


※料金は原則的に税込み金額表示です。


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